オンラインやICTを活用した高齢者見守り活動の事例紹介
はじめに:広がる高齢者見守りの形
地域における高齢者の見守りや支え合いは、地域社会の重要な機能の一つです。高齢化が進む現代において、その重要性はますます高まっています。従来の対面での訪問や声かけといった活動に加え、近年ではインターネットやICT(情報通信技術)を活用した新たな見守りの形も生まれてきています。
特に、多忙な日常を送る方々にとって、こうしたデジタル技術を活用した活動は、時間や場所の制約を超えて地域貢献に参加できる可能性を広げています。本記事では、オンラインやICTを活用した高齢者見守り活動の具体的な事例をご紹介し、多様な関わり方があることを示します。
オンライン・ICTを活用した見守り活動の多様な事例
オンラインやICTを活用した高齢者見守り活動は、その手法や内容によって様々なタイプがあります。ここでは、代表的な事例をいくつかご紹介します。
事例1:安否確認やコミュニケーションを支援するアプリ・サービス
高齢者向けに開発された安否確認アプリや、スマートスピーカーなどを活用した見守りサービスがあります。これらの多くは、離れて暮らす家族が見守りの主体となるケースが多いですが、地域住民が協力して見守る仕組みに組み込まれている事例も見られます。
- 活動の概要: 高齢者の生活状況をアプリの通知やスマートスピーカーへの応答履歴を通じて間接的に確認します。特定の期間応答がない場合などにアラートが発せられます。
- 具体的な活動内容: 見守る側はスマートフォンやパソコンを通じて通知を確認したり、定期的に簡単なメッセージを送ったりします。異常を知らせる通知があった場合に、地域で連携している協力者や関係機関が駆けつける体制が構築されている場合があります。
- 参加頻度や所要時間: 通知の確認は数分で完了します。普段の活動は通知が来た際に確認する程度であり、時間に拘束される度合いは低いと言えます。
- 必要なスキルや資格、準備など: スマートフォンやパソコンの基本的な操作スキルがあれば参加可能です。特別な資格は不要です。サービスの登録や設定が必要となる場合があります。
- 参加方法や問い合わせ先: 自治体や社会福祉協議会、または民間の見守りサービス提供事業者などが主体となって実施しています。関心がある場合は、お住まいの地域の自治体窓口や地域包括支援センターに相談することで情報が得られる可能性があります。
- 活動を通じて得られるもの: 離れていても高齢者の状況を把握できる安心感を得られます。地域全体で見守る仕組みの一部となることで、社会貢献に繋がります。
事例2:オンラインでの交流会やサロン
インターネットのビデオ通話機能を活用し、高齢者と地域住民がオンラインで交流する取り組みも行われています。
- 活動の概要: オンライン会議システム(Zoomなど)を利用して、高齢者の方々と地域住民が画面越しにお話ししたり、一緒に体操やレクリエーションを行ったりします。
- 具体的な活動内容: 事前に設定された日時に、自宅などインターネット環境がある場所からパソコンやタブレット、スマートフォンを使って参加します。参加者同士で近況を話し合ったり、趣味に関する話題で盛り上がったりします。体操の講師やレクリエーションの進行役を務める場合もあります。
- 参加頻度や所要時間: 週に1回や月に数回など、開催頻度はプログラムによります。1回あたりの所要時間は1時間程度が一般的です。決まった時間に拘束されますが、移動時間は不要です。
- 必要なスキルや資格、準備など: オンライン会議システムの利用方法を理解している必要があります。多くの場合は初めての方向けのサポートや事前練習が用意されています。特別な資格は不要です。インターネット環境と対応デバイスが必要です。
- 参加方法や問い合わせ先: 主に地域のNPO法人や社会福祉協議会、自治体などが実施しています。広報誌やウェブサイトで参加者を募集している場合があります。
- 活動を通じて得られるもの: 参加する高齢者の孤立を防ぎ、社会との繋がりを提供できます。多様な参加者との交流を通じて、新たな発見や学びを得られる機会となります。
事例3:地域の情報共有プラットフォーム
地域住民同士が情報交換や困りごとの共有を行えるオンラインプラットフォームも、間接的な見守り機能を持っています。
- 活動の概要: 地域限定のSNSやウェブサイトなどで、住民が日常の出来事や地域の情報を発信したり、ちょっとした困りごと(「〇〇さんが最近見かけない」「〇〇に関する情報が欲しい」など)を共有します。
- 具体的な活動内容: スマートフォンやパソコンからプラットフォームにアクセスし、情報閲覧や投稿を行います。他の住民の投稿に対してコメントを送ったり、必要に応じてオフラインでの協力に繋げたりします。
- 参加頻度や所要時間: 自分の都合の良い時間にいつでもアクセスできます。情報収集や投稿にかかる時間は数分から数十分程度です。
- 必要なスキルや資格、準備など: プラットフォームの利用方法を理解している必要があります。登録が必要な場合があります。特別な資格は不要です。
- 参加方法や問い合わせ先: 町内会や自治会が運営している場合や、特定のNPO法人が運営している場合があります。地域の広報や回覧板などで情報が得られることがあります。
- 活動を通じて得られるもの: 地域の様々な情報に触れることで、地域への関心を深めることができます。他の住民との緩やかな繋がりを持つことができ、いざという時の助け合いに繋がる可能性があります。
忙しい日常の中でも貢献できる可能性
ご紹介した事例のように、オンラインやICTを活用した見守り活動は、従来の活動とは異なる特徴を持っています。
- 時間・場所の柔軟性: オンラインでのやり取りやアプリを通じた見守りは、自宅など場所を選ばず、自分の都合の良い時間に短時間で関われる形式が多く存在します。
- 多様な関わり方: コミュニケーションが得意な方はオンライン交流会、情報収集や発信が得意な方は地域プラットフォームへの参加、技術サービスに関心がある方はアプリやサービスの情報収集・利用支援など、自身の関心やスキルに合わせて多様な選択肢があります。
もちろん、オンラインやICTだけですべての見守りが完結するわけではありません。しかし、これらをうまく活用することで、これまで時間や場所の制約で地域活動への参加が難しかった方々も、高齢者見守りの一員として貢献できる可能性が広がります。
まとめ:自分に合った見守りの形を見つけるために
地域における高齢者見守り・支え合い活動は多岐にわたります。特にオンラインやICTを活用した新しい手法は、忙しい中でも参加しやすい選択肢として注目されています。
重要なのは、ご自身のライフスタイルや関心に合わせて、無理なく続けられる活動を見つけることです。まずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。お住まいの自治体や社会福祉協議会、地域のNPO法人などが、様々な活動に関する情報を提供しています。デジタル技術を活用した活動も含め、多様な選択肢を知ることが、地域貢献への最初の一歩となるでしょう。
地域全体で高齢者を支え合う仕組みの中で、それぞれの強みを生かせる場所がきっと見つかるはずです。